PROJECTSOctober 18, 2019

クライアント事例 -ネットプロテクションズ代表取締役社長 柴田 紳氏インタビュー-

「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに掲げ、2002年より手掛けてきた決済サービスを軸に、新しい信用を創造する「Credit Tech」のパイオニアとして国内外で新たな事業を積極的に展開するネットプロテクションズ。今回は同社を語る上で欠かせない、事業成長の裏側にある独自の組織・文化にフォーカスし、柴田社長にインタビューを行いました。採用のパートナーとして10年にわたり同社を支援してきたスローガン代表・伊藤から、ネットプロテクションズの根底に流れるフィロソフィーとスローガンが提供する価値についてお話を伺いました。

株式会社ネットプロテクションズ 代表取締役社長 柴田 紳氏

伊藤ネットプロテクションズを象徴するポイントとして、新卒採用をはじめ若手の採用に強く力を入れている印象があります。その背景を教えてください。

柴田:事業による社会への価値貢献はもちろんですが、我々にはもう一つ大きな存在理由があります。それは、優秀でエネルギーのある若者がそのポテンシャルを十分に発揮し磨かれていくフィールドをつくること。

私自身が新卒で勤めた大企業で3年間まともな仕事をさせてもらえず、成長しようにもできない環境を経験したことが原体験となっているのですが、未来ある若者の成長は社会全体としても非常に重要なテーマだと考えています。
そこで私はこの会社を通じて、若者が自分のなりたい姿を思い描き、実現していくことに寄与したいという想いを強く持つに至りました。

ネットプロテクションズでは正社員に企画、マネジメントといった事業の根幹に近い業務を担ってもらい、オペレーション業務はできるだけパートナー会社に任せるスタイルで事業運営しています。優秀で意欲あるメンバーには、新卒であっても入社した瞬間から事業家の目線をもって事業の全体像を見ながら意思決定に関与してもらいます。

伊藤:会社規模が大きくなるにつれて、全員が事業家の目線をもって仕事をするのは難しくならないのでしょうか?

柴田:いまはメンバー500人中160人が正社員ですが、それぞれダイナミックに拡大している事業が6つあります。最も大きな基幹事業である「NP後払い」でも正社員は30-40人で運営しています。事業の中にさまざまなチームがあるので、1チームの人数は10人未満の少人数チームがほとんどです。
リーダーになるまで順番待ちをする必要はなく、意思も権限も、もちろん責任も最初からもつことになります。どの事業に入ってもすぐに中核とならざるを得ず、新卒で2-3年経つと事業責任者のスタンスでディスカッションするようになります。一般的な感覚ではだいぶ生意気な若者にうつるかもしれませんね。

またこうした組織運営を人事制度として本格的に実現していくために、「Natura(ナチュラ)」という仕組みを2018年から導入しました。たとえば役職としてのマネージャーを廃止し、全員がマネージャーとして機能することを期待しています。

伊藤:意欲ある優秀な若者が成長するために必要な要素は何であると考えていますか?

柴田:私は以下の3つの要素を通じて、意欲ある人が健全に成長できると考えています。
・1つ目は事業企画。全体を俯瞰できる事業家目線を早い段階で身につけること。
・2つ目はスキル。弊社では営業、マーケティングといった機能グループの中で職能を身につけることになります。
・最後に3つ目は、会社づくり。我々は全員に対して採用やブランディングなど会社づくりに寄与する何らかの活動に参加することを推奨しています。自分の成長だけを求めて組織貢献を考えない人は視野が狭くなり、結果的に自己成長の機会も得づらくなるでしょう。

この3つを意識して2-3年過ごした若者は視座が高くなり視野が拡がる。これは私自身の経験からも確信しています。私も20代で経営者としてスタートしたとき、システム開発以外の業務は全て自分でやっていました。上下左右に複数の視点を移動しながら、広範な仕事をしてきたことで成長できた実感があります。

伊藤:その3つを若手が実践するのは他の会社ではなかなかできないことだと思いますが、ネットプロテクションズではなぜ実現できたのでしょうか?

スローガン株式会社 代表取締役社長 伊藤 豊

柴田:もちろん過去には失敗もしてきました。しかし、若者の成長が会社の大命題であるため、成長の仕組みづくりを諦める選択肢はなく、とにかく反省して次の仕組みに活かすことを繰り返していまに至っています。2007年から新卒採用しているので、もう12年間試行錯誤していることになりますね。振り返ると、ネットプロテクションズの歴史は人を育てる仕組みづくりそのものであったとも言えるかもしれません。

過去の反省として、優秀な若者ほど事業家として責任ある仕事ができないと早晩辞めてしまうことを実感していたので、次第に全員参加の経営にシフトしていきました。
事業企画の機会を全員が得られ、重要な物事ほど全員参加して決める。事業部単位でも全員で合宿してとことん議論するなど、会社全体のスタンスとして浸透しています。

また、先にお話しした通り、この環境で数年経験を積めばどこからでも引く手あまたの人材になります。どこでも活躍できるメンバーであるからこそ、当社に愛着をもって当事者として参画し続けてもらいたいので、自ら新しい機会を創出できる環境をつくっています。

伊藤:短期的な事業成長を考えると中途の即戦力人材を採用した方が早い、という見方もあると思いますがその点はどのようにお考えですか?

柴田:確かに中途の即戦力を採用すればいいのにという批判をずっと受けてきましたが、中途の即戦力ばかりの会社では、若者が社会的リーダーとして育ちにくいと考えています。

人が成長するためには試行錯誤が必要で、試行錯誤のためには「空白」が必要。経験者に答えを求めるのではなく自分たちで考えて少しずつ良くなっていくことが重要です。スキルや経験が豊富な人の発言が正解だと思い込むと試行錯誤しなくなり、若者の成長が鈍化するリスクがあります。
弊社でも結果的にスペシャリストとして高いスキルを持った人は増えていますが、スキル偏重の採用はしないように気をつけています。

本来ネットプロテクションズの決済事業は性質上、従順な人に統制的に仕事をさせたほうが短期的には伸びるのかもしれません。しかしそうなるとピラミッド構造が生まれ、イノベーションが一部のリーダー層からしか生まれなくなり、組織が硬直化することになります。
短期的成長とのジレンマを抱えながらも、私たちは人と組織の長期的成長を優先してきました。

結果として新卒で数年経ったメンバーのなかに、周囲を巻き込んで事業を推進でき、マネジメントの役割も果たすことができる中核が多く育ってきている実感があります。この5年で9割以上の新卒メンバーが定着し、活躍していることも、採用と人材育成の方針がフィットしている一つの証左かもしれません。

伊藤:御社が新卒採用に注力されるようになって、スローガンとのお付き合いも2008年から10年以上続いていますが、当時のお話を教えてください。

柴田:いまでこそ採用で使える予算もオプションも増えてきましたが、当時は本当にリソースがなかったので、知恵を絞って使えるものは何でも使わないとダメ、という状況でした。経営者同士の情報交換でも採用関係の話が盛んに出ており、どこの会社も良い採用パートナーを血眼になって探していましたね。
そんな時スローガンに出会ったのですが、他社とは違う空気感があったことを覚えています。トップ層の学生と強く関係性を構築しており、世の中の広い視点からキャリア観、仕事観を意義付けする活動を地道にやっていました。私たちが考えていたことと近い思想だと感じましたし、それはいまも変わらない印象です。社会的な大義が見える会社、というのはスローガンのブランドになっているのではないでしょうか。

伊藤:ネットプロテクションズとはベースの価値観が近いように感じています。優秀な若者に対して、自社の採用を超えて私たちと一緒になってメッセージを伝えてくれている存在だと思っています。

柴田:一昔前は良い大学を出てベンチャーに行くなんて頭がおかしいと言われていましたが、少しずつに優秀な若者こそ新しいものを生み出す側に行くという流れができてきました。そのトレンドづくりにスローガンが果たした役割は大きかったのではないかと思っています。

学生時代にGoodfindを通じてチャレンジするマインドに触れた人には、社会に出て数年経って起業やベンチャーなどを選ぶ人も多いように思います。結果として大企業でも旧態依然とした組織は優秀な若者から選ばれなくなっており、変化を余儀なくされています。スローガンが発信してきたメッセージが、社会を柔らかくし、世の中の組織を次のステージに進めるきっかけになったと言えるかもしれませんね。

伊藤:私たちも試行錯誤の日々でしたが、志を同じくする多くのお客様に支えられてブレることなく事業を続けることができました。

柴田:言葉を選ばずに言えば、一見地味そうに見えることを愚直にやってきたことへの信頼はありますね。これは10年くらい継続しないとなかなか得られないものです。

私たちも地味に愚直にという点で共感するところなのですが、「NP後払い」も、いまや年間1350万人のユニークユーザーに決済手段として使用されています。この蓄積によってユーザーと顧客企業の皆さまとの信頼関係ができていると思っており、それがネットプロテクションズの最大価値なのではないかと考えています。

採用支援のサービスも立ち上げて1-2年程度は勢いでやれるものですが、愚直に10年以上続けているのはすごいと思いますし、時流に乗っただけの軽いサービスじゃない、というブランドができていますよね。当社に入る新卒メンバーでGoodfind、スローガンを知らない、という人はほとんどいません。

伊藤:よく飽きずにやっていると言われることも多いです笑

柴田:そこを乗り越えてこそ、だと思います。一見楽しそうで儲かりそうな領域は参入プレーヤーも多く、すぐにレッドオーシャンになります。
他が目をつけない、地味そうな領域でずっとやり続けるというのは一つの戦略と言えます。その意味ではネットプロテクションズもスローガンも、地味に愚直にやり続けてようやくこれから社会変革に向けて仕掛けていく土台ができてきた、という段階に来ているのかもしれませんね。

若者に影響を与える事業というのは社会的にとても重要だと思っています。
信頼できる本物の情報を見極めるのは難しい時代だからこそ、若者にとってスローガンの存在はより重要になるのではないでしょうか。

これからもお互い若者が成長し活躍する社会に向けて切磋琢磨していきましょう。

 

PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA

柴田 紳株式会社ネットプロテクションズ 代表取締役社長

1998年に一橋大学卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)に入社。 2001年にIT系投資会社であるITX株式会社に転職し、株式会社ネットプロテクションズの買収に従事。 すぐに出向し、何もないところから、日本初のリスク保証型後払い決済「NP後払い」を創り上げる。 2017年、アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー特別賞を受賞。

伊藤 豊スローガン株式会社 代表取締役社長

東京大学文学部行動文化学科卒業後、2000年に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。システムエンジニアの経験の後、関連会社での新規事業企画・プロダクトマネジャーを経て、本社でのマーケティング業務に従事。2005年末にスローガン株式会社を設立、代表取締役に就任。